税金を財源とした研究の紹介

研究者ではない一般の納税者の方に,最近20年間の税金を財源とした研究の内,眞溪が研究代表者であった研究についてのみご紹介します.

体積電流結合の存在証明とその機能的役割の探求(2022-2024年度科研費:挑戦的研究(開拓))

現在進行中で,「神経結合=シナプス結合+体積電流結合」という仮説を証明するために,二人のヒトを電気的に接続し,意味のある情報を通信させることに挑戦しています.

人間の地磁気感受性の行動・生理計測-磁気覚と視覚の干渉効果を利用して-(2018-2021年度科研費:基盤研究B)

 本研究は,Human Frontier Sciece Programの助成の下(2014-2017年度),カリフォルニア工科大のKirschvic教授・下條教授と人間の地磁気感受性の共同研究(代表:下條教授)を行ってきた発展型です.テーマ名通り,磁気覚と視覚の干渉効果を用いて,人間の地磁気感受性を間接計測しようとしています.

電流状態フィードバック型BMIの研究開発(平成25年度:SCOPE)

 Brain-Machine Interface(BMI)とは,機械やコンピュータを操作する場合に,動作による操作なしにその操作意図を直接脳波から読み取って機械やコンピュータを操作するインタフェースのことです.BMIには様々な方式がありますが,本研究では脳波の同期現象に基づく操作方式を採用しています.頭表に,今回開発した脳波の共振状態を制御する電子回路(tEIC)を取り付け,より正確かつ迅速にBMIが動作するように研究しました. その後,tEICは行動実験のパフォーマンスを上げたり下げたりできることが判明し,その方向の研究に注力しています.

「見てるけど見えてない」の脳波・脳磁界計測(平成21-23年度科研費:基盤研究B)

 自動車の運転中など,日常生活の中にも「見てるけど見えてない」という不注意の状態が存在します.これは見てる情報が意識下に上がってくるかどうかだと考え,無意識下での脳活動を捉えることを目指しました.
 実験としては,あらかじめ定めた図形を見つけたら,できるだけ早くボタンを押すという行動実験を行いました.図形は1個ずつ2-3秒間隔で提示されます.実験は3セットあり,それぞれに100回程度のボタン押しを含みました.最初の実験は,ボタンを押すインストラクションはせず,ただ視覚提示の図形を見るだけのセットでした.この実験が終わった後,ボタン押しのインストラクションをし,実際にボタン押しするセットを行いました.最後に,またただ視覚提示の図形を見るだけのセットを行いました.
 外から見る実験としては,第1セットと第3セットは,ボタン押しせずただ見るだけという点において同じで,実際にボタン押しを行う第2セットだけが異なります.脳波波形を直接見ても,運動や運動したことによる体性感覚の生じる第2セットだけが仲間外れでした.しかし,当研究室で開発してきた共振状態の脳波解析では,第1セットだけが仲間外れでした.すなわち,ボタン押し課題を経験する前と後では脳は変わってしまい,経験後ではボタン押しが課されなくてもボタン押しをしているかのような状態になっていると考えられます.この実験とは異なりますが,見てるけど見えてないは,この状態に陥っているのかも知れません.

位相情報に着目した脳波・脳磁界計測(平成19-20年度科研費:基盤研究B)

 人間の脳は自発的に電気的なリズムを刻んでいます.アルファ波という言葉を聞いたことがあるかと思いますが,これもその自発的なリズムのひとつです.人間に外界から刺激が入ってくると,この自発的なリズムに変化が生じます.この変化を脳波・脳磁界によってうまく捉える実験・計測法の開発を行いました.
 脳機能を調べる実験では,人間に刺激を見せてそれに関係する課題を行うことがよくあります.たとえば,PCのモニタ上に複数の図形を提示し,その中からあらかじめ指定しおいた特定の図形を見つけたらなるべく早くボタン押しを行うなどです.この種の実験は,通常,後の統計処理のために50-100回行われます.本研究では,刺激を与えた時刻のアルファ波の位相を求め,その位相順に実験順を並べ替えて解析を行う方法を開発しました.位相というのは,アルファ波を三角関数で表したときの三角関数の中身となる角度のことです.
 この結果,視覚野と運動野など課題に関係する脳領野の共振関係がわかるようになってきています.共振関係というのは,海面の揺れる様子を考えるとわかりやすいかもしれません.ある場所の海面の上下の様子が,離れた別の場所の海面の上下の様子と関係があるのかどうかということです.関係があることが情報の伝達なのか?関係がないことがそうなのか?あるいはそれらの変化が重要なのか?これらはこれからの課題です.

変調刺激による誘発脳波・脳磁界計測(平成16-17年度科研費:基盤研究B)

 人間の脳はたくさんの神経細胞からできています.この神経細胞は,外部から視覚,聴覚,触覚などの刺激を受けると,その情報処理のために電気的な活動をします.個々の神経活動は非常に微弱な電流であり,頭の外から観測することは不可能です.しかし,時として集団的に場所や時間がそろって電流が流れることがあり,外部から頭表の電圧分布(脳波)として観察することができます.電流が発生すれば必ず右ねじの法則で磁界も発生するので,脳波を磁界として観察することもできます.
 たとえば,人間が言葉を見て理解する様子を考えましょう.脳は,書き言葉として形の処理を行い,話し言葉として音の処理を行い,これらと連携しながら意味の処理を行います.さて,この間,脳は言葉の処理に専念しているわけではなく,これとは関係のない聴覚や触覚についての処理や,気分・情動に関係する処理も並行に行っていることでしょう.言葉を処理中の脳波・脳磁界を観察してもいろいろな波形が混じり合っているのです.このため,脳波や脳磁界の計測では,同じ刺激を何10回,何100回も人間に提示して,提示したタイミングを下に波形を平均します.平均化によって,言葉に対する形・音・意味の処理による波形はより際だち,刺激提示のタイミングとは関係のない処理による波形は軽減されていきます.
 同じような状況が,ラジオやテレビの電波にも見られます.電波そのものは混じり合って飛んでいます.しかし,送り手の周波数やチャネルに受け手が合わせれば,混じり合うことなく聴きたいもの観たいものを取り出せます.平均化などしていません.さらに進んで,この混じり合いは,携帯電話の通信でも見られます.携帯電話の通信では多くの人が同時に通話していますが,混信することなく話し相手と通話することができます.ここではCDMA方式と呼ばれる符号化・復号化によって,同じ符号を共有する者どうしにしか会話を理解できないようにしてあります.携帯電話の通信では暗号化も行っているわけです.さて,ここでも,平均化などしていません.

μX線CT骨断層像の複雑性解析による骨強度診断法の開発(平成13-14年度科研費:基盤研究B)

 骨がスカスカになって弱くなる病気に骨粗しょう症があります.弱くなった骨は骨折しやすく,さらに骨粗しょう症の場合骨の再生にも時間がかかるという問題もあります.また,寝たきりになる原因の上位に骨折があり,骨粗しょう症は社会問題もはらんでいます.
 骨にかかわらず,ものの強度を決める要因は,ものの質,量,構造にあります.骨粗しょう症の診断では,骨塩計測と呼ばれる計測法で,骨の量を調べています.現実には,同じ量でも,質や構造の違いから,骨の強度に違いが生じてもおかしくないわけです.
 そこで,μX線CTを用いて骨の内部構造を計測し,内部構造の複雑さを数値化して骨強度を予測する計測法を開発しました.μX線CTはまだ人間に適用されていませんが,骨塩も同時に計測できるので,今後の応用に期待が持たれます.